福沢諭吉は、精神的な独立だけでなく、経済的な独立を非常に重んじました。そして、経済を一部の専門家のものにせず、ふつうの人に伝えようとしました。それが『民間経済録』(1880年)です。
経済的自立は、独立の一部
福沢の独立自尊には、経済的自立が含まれます。どれほど心が立派でも、生活を他人の財に頼っていれば、やはり倚(よ)りかからざるを得ない。
みずから心身を労して私立の活計をなす者は、他人の財によらざる独立なり。
自分の体と心を働かせて、自分の生計を立てる。これが独立の具体的な姿だと、福沢は『学問のすゝめ』で述べています。お金は、独立の敵ではなく、独立の条件なのです。
簿記と保険を紹介した人
福沢は、西洋の経済のしくみを日本に積極的に紹介しました。
- 複式簿記:お金の流れを正しく記録する技術
- 保険:不慮の災難に備えて、みんなでリスクを分け合うしくみ
『西洋事情』では、欧米の生命保険・火災保険・海上保険を「請合(うけあい)」として紹介しています。災難に遭っても、備えがあれば人は立ち直れる。それは一家の独立を守ることでもありました。
「義」と「利」を対立させない
伝統的には、利益を追うことは卑しいとされがちでした。福沢は、そうした見方を退けます。商売で正当に利益を得ることは、悪ではない。道を守りながら利を取ることが、実業の正道です。
この「義利両全」の考えは、士族の商法がうまくいかなかった時代に、商売そのものを正当な営みとして位置づけ直すものでした。
お金の知識は、身を守る
福沢の経済論は、儲け話ではありません。むしろ、だまされない、揺らがないための知識です。
- 収支を記録する習慣は、生活の主導権を自分に保つ
- 保険のような備えは、不運に人生を左右されないための知恵
- 経済を理解すると、世の中の「話」に流されにくくなる
お金を知ることは、独立の気力を支えることでもあるのです。
現代に引きつけると
- 家計を記録する。「知らないうちに」を減らす
- 備えを持っておく。貯蓄や保険は、自由のための余白
- 少しずつ経済を学ぶ。仕組みを知れば、選択肢が増える
