こんな経験はありませんか?
- 指示を出しても、同じミスを繰り返される
- 褒めれば伸びると思ったのに、褒めないと動かなくなった
- 注意したら、必要以上に落ち込ませてしまった
- 「自分で考えて」と言っても、確認ばかり求められる
- 結局、自分がやってしまったほうが早いと感じる
部下を育てる立場になると、多くの人が「どう動かすか」を考えます。しかし、思うように動かない部下を前にして、言葉が強くなったり、逆に遠慮したりと振り回されがちです。
アドラーはどう見た?
アドラーは、人を動かす力は外側からの評価ではなく、内側から湧く勇気にあると考えました。
だからこそ、上司の役割は部下を操ることではなく、その人が自分で動けるようになる土台を整えることだと言えます。
ほめることと、勇気づけること
ここで重要なのが勇気づけと「ほめる」の違いです。
- ほめる → 結果を評価する。上下関係を作る
- 勇気づける → 過程と存在を認める。対等な関係を作る
ほめるは、評価する側とされる側の縦の関係を前提にします。一方、勇気づけは横の関係の中で働きます。
- ほめる:「よくできたね」(評価)
- 勇気づける:「助かったよ、ありがとう」(感謝)
部下を育てるうえで、この違いは決定的です。
なぜそうなるのか?
ほめる・報酬で動かすと、条件待ちになる
ほめられて動く部下は、ほめられないと動かなくなります。報酬も同じです。
- 評価されないと、やる気が出ない
- ご褒美がないと、動かない
- 「何をすれば認められるか」ばかり考える
これは部下の性格の問題ではなく、関わり方が生んだ結果だと考えられます。外からの刺激で動く習慣がつくと、内側の動機が育ちにくくなります。
勇気をくじくと、行動は消える
アドラーは、問題行動の背後には勇気をくじかれた状態があると見ました。
- 過度に批判された → 「自分には無理だ」と思う
- 過度に干渉された → 自分で決められなくなる
逆に、適切に勇気づけられれば、人は困難に向かう力を取り戻します。育てるとは、この勇気を削らないことでもあります。
「あれもこれも」は越境になる
部下の成長を思うあまり、先回りして手を出したくなります。しかしそこで問われるのが課題の分離です。
- 部下がどう挑戦するか → 部下の課題
- 自分がどう支援するか → 自分の課題
部下の課題を代わりに引き受けてしまうと、その人は自分で学ぶ機会を失います。手を出すことと、支えることは別なのです。
→ 詳しくは課題の分離とは
どう付き合えばいい?
1. 結果ではなく、過程を見る
評価の言葉を、過程への気づきに置き換えます。
- ✗ 「売上トップだね、すごい」(結果の評価)
- ○ 「訪問数を増やす工夫、続けていたね」(過程を認める)
結果が出なかったとしても、その人が積み重ねた努力には触れられます。
2. 感謝と信頼を伝える
「ありがとう」「助かった」は、評価ではなく感謝です。上下ではなく、対等な立場から出る言葉です。
- 「この資料、分かりやすかったよ、助かった」
- 「あなたなら、この判断はできると思っている」
信頼は、できあがった結果ではなく、これからの行動に向けて伝えます。
→ 詳しくは縦の関係・横の関係
3. 任せて、待つ
勇気づけの実践には、任せることが欠かせません。
- やり方を丸ごと指定せず、目的を伝えて委ねる
- 途中で口を出しすぎない
- 失敗しても、取り返せる範囲で見守る
任せることは放任とは違います。困ったときに戻れる場所を用意したうえで、主導権を渡します。
4. 叱る代わりに、事実と次の一手を共有する
感情的な叱責は、勇気をくじきます。代わりに、起きた事実と、次の行動を一緒に確認します。
- 「納期に遅れたね。どこで止まった?」
- 「次はどう進める?」
人ではなく、問題に焦点を当てます。これは上司との関係に悩む立場の自分自身にも、同じように当てはまります。
