勇気づけとは何か
アドラー心理学で最も重視される概念が勇気づけ(encouragement)です。
勇気づけとは、困難を克服する活力を与えることです。
「あなたにはそれができる」と信じ、「あなたは一人ではない」と伝える。それが勇気づけです。
ほめるとの違い
多くの人は「勇気づけ=ほめること」と考えます。でもアドラーは「ほめる」ことを否定しました。
| ほめる | 勇気づけ | |
|---|---|---|
| 視点 | 結果を評価 | 過程と努力を認める |
| 関係性 | 上下関係(評価する側/される側) | 対等な関係 |
| 効果 | 一時的な動機づけ | 内発的な動機づけ |
| 問題点 | ほめられないと行動しない | 自分で自分を認められる |
ほめる問題点
アドラーが「ほめる」を問題視した理由:
-
上下関係を作る:ほめる人は「評価する側」、ほめられる人は「評価される側」。これは対等ではない。
-
ほめられることが目的になる:「ほめられるために行動する」ようになると、ほめられないときは行動しなくなる。
-
結果だけを評価する:過程や努力が無視され、結果が出たときだけほめられる。
勇気づけの特徴
一方で勇気づけは:
- 対等な関係:評価せず、共感する
- 過程を認める:結果だけでなく、努力や姿勢を認める
- 内発的な動機:「自分がやりたいからやる」という気持ちを引き出す
勇気づけの具体的な方法
1. 感謝を伝える
「ありがとう」「助かったよ」——これは評価ではなく、感謝です。
- ✗ 「よくできたね」(評価)
- ○ 「手伝ってくれてありがとう」(感謝)
2. 過程を認める
結果だけでなく、努力や姿勢を認めます。
- ✗ 「100点取ったの?すごい!」(結果の評価)
- ○ 「毎日勉強頑張ってたね」(過程を認める)
3. 共感する
相手の気持ちに寄り添います。
- ✗ 「大丈夫、大丈夫」(否定)
- ○ 「つらいよね。わかるよ」(共感)
4. 信頼を伝える
「あなたならできる」という信頼を伝えます。
- ✗ 「もっと頑張らなきゃ」(要求)
- ○ 「あなたはきっとできると思う」(信頼)
なぜ勇気づけが重要なのか
アドラーは、現代のさまざまな問題行動の背後には勇気をくじかれた状態があると考えました。
勇気をくじかれた状態
- 「どうせ自分なんて」
- 「やっても無駄だ」
- 「自分にはできない」
こうした状態は、幼少期に勇気をくじかれた経験から来ることが多いです。
- 過度にほめられた → ほめられないと行動しない
- 過度に批判された → 自分には価値がないと思う
- 過度に干渉された → 自分で決められない
勇気づけで回復できる
勇気をくじかれた状態は、勇気づけによって回復できます。
アドラーは言いました。
The proper treatment for such persons is to encourage them, never to discourage them. We must make them understand that they are capable of facing difficulties and solving the problems of life.
「励まし、決して挫けさせないこと」。そして「自分にも困難に立ち向かう力がある」と理解してもらうこと。これだけが、自信を築く唯一の方法だとアドラーは考えました。
日常生活での勇気づけ
子育てで
- ✗ 「いい子ね」「おりこうさん」(評価)
- ○ 「お手伝いしてくれてありがとう」(感謝)
- ○ 「自分で決められたね」(信頼)
職場で
- ✗ 「よく頑張ったね」(評価)
- ○ 「あなたのアイデアが役に立ったよ」(貢献を認める)
- ○ 「一緒に考えよう」(対等な関係)
友人関係で
- ✗ 「すごいね」(評価)
- ○ 「それ、大変だったでしょう。よく乗り越えたね」(共感)
- ○ 「あなたなら大丈夫だと思う」(信頼)
