こんな経験はありませんか?
- 何度言っても、おもちゃや服が片づかない
- 朝の支度を、毎日のように促してしまう
- 注意しても、聞こえないふりをされる
- きょうだいで、同じことを言っても聞く子と聞かない子がいる
- 大きな声を出せば、その場は動くが、翌日また同じ
- 「この子は言うことを聞かない子だ」と決めつけている
- しつけができていないと思われないか、不安になる
- 叱ったあとに、自分にがっかりする
言うことを聞かないのは、わがままや性格のせいだと決めつけていませんか。アドラー心理学は、それを関係と目的の問題として見ます。
アドラーはどう見た?
アドラーは、人間の行動には必ず目的があると考えました。これを目的論と呼びます。子どもが言うことを聞かないのも、無意味な反抗ではなく、何かの目的に沿った行動です。
「聞かない」にも目的がある
聞かない行動が果たしている役割を挙げると、こうなります。
- 注目を集めたい → 反応が返ってくる
- 主導権を握りたい → 自分のペースを守れる
- 決めつけられたくない → 言いなりにならずに済む
- 失敗したくない → やらなければ、できなくても傷つかない
行動の裏に目的があると見ると、叱るだけでは何も変わらない理由が見えてきます。
力で従わせる関係にしない
叱るとは、力で相手を動かすことです。強い側と弱い側の関係が固定されます。アドラーは、人を上下ではなく横で見ることを重んじました。
→ 詳しくは縦の関係と横の関係
なぜそうなるのか?
叱ることは、注目という報酬になる
子どもにとって、注目は強い報酬です。good な注目でも、マイナスの注目でも、反応があれば行動は続きます。
- 叱る → 反応が返る → また同じことをする
- 静かに見るべき場面で、つい反応してしまう
「叱っているのに直らない」とき、叱ることは目的をかなえてしまっていることがあります。
親の課題と子の課題が混ざる
ある行動の結末を、最終的に引き受けるのは誰か。これを分けて考えるのが課題の分離です。
- 親の課題 → 安全を守る、時間の枠を整える、環境を用意する
- 子の課題 → 自分の行動を選ぶ、その結果を受け取る
この二つが混ざると、「叱って動かす」か「放置する」かの二択になりがちです。
期待が怒りに変わる
「こうしてほしい」という期待が裏切られると、怒りが生まれます。期待が大きいほど落差も大きくなります。
→ 詳しくは他人に期待してしまう
言い合いが目的をすり替える
叱り返しでけんかになると、本来の目的(片づける、支度する)から意識がそれます。勝ち負けの応酬になり、行動は変わりません。
どう付き合えばいい?
1. 叱る前に「何のため」を問う
まず、その行動が何を手に入れているのかを考えます。
- 注目がほしいのか
- 主導権を守りたいのか
- 失敗を避けたいのか
目的が見えると、叱る以外の応じ方が見えてきます。
2. 一回で伝え、あとは結果に任せる
同じことを何度も言うと、言葉の重みが減ります。短く一度伝えたら、本人が受け取る結果に任せます。
- 朝の支度をしない → 遅刻する
- 片づけない → 使いたいときに見つからない
危険が伴う場面は例外です。安全は親が持ちます。
3. 命令ではなく、協力を求める
命令は上下の関係を強めます。相談の形にすると、抵抗が減ります。
- ✗ 「早く片づけなさい」
- ○ 「片づけよう。どれからやる?」
- ✗ 「早くして」
- ○ 「出発は8時。あと何が要る?」
4. よい行動に注目する
できていないことではなく、できている瞬間に目を向けます。
- 「自分で出せたね」
- 「待てたね」
叱る注目より、認める注目のほうが、行動を育てます。
5. 対等な言葉で、短く伝える
見下ろす言い方ではなく、一人の人として伝えます。
- 人格ではなく、行動に触れる
- 「ダメな子」ではなく「これはやめよう」
よくある誤解
「言うことを聞かせる」のがしつけではない
しつけの目的は、従わせることではなく、自分で選べるようになることです。その場で従わせても、次の行動は育ちません。
「聞かないのは愛情不足」でもない
愛情の量の問題ではありません。関わり方と、力の使い方の問題です。
「放置」とは違う
課題を分けることは、無関心になることではありません。安全と環境は親が整え、選ぶ力は子に返します。
