アドラーの著作をどう読むか
アドラーの著作は、大きく三つの層に分けて考えると整理しやすくなります。
- 理論の基礎を築いた初期の著作
- 一般向けに書かれた読みやすい概説書
- 後年の思想をまとめた晩年の著作
どれも「人間は変われる」という立場を共有しています。ただし、読みやすさも、扱う範囲も異なります。
まずは全体像をつかみ、必要に応じて原典へ進むのが現実的だと考えられます。
主要な著作一覧
The Neurotic Constitution(1912)
原題は Über den nervösen Charakter。アドラーがフロイトから離れた後に、独自の理論をまとめた初期の著作です。
神経症を「器官劣等性」と「優越への志向」から説明しようとした点に、後の個人心理学の原型が見られます。専門的で難度は高めです。
The Practice and Theory of Individual Psychology(1920)
個人心理学の理論と方法をまとめた論集です。器官劣等性、劣等感、神経症、治療の実際など、幅広いテーマを扱います。
講義や論文をもとにしているため、体系的な入門書というよりは、理論の全体像を横断的に眺める本だと言えます。
→ 詳しくは『個人心理学講義』とは
Understanding Human Nature(1927)
原題は Menschenkenntnis。人間の性格や発達を、一般の読者に向けて語った著作です。
「人間を知る」という視点から、性格の形成、社会性、幼少期の経験などを扱います。専門用語が比較的少なく、アドラーの人間観に触れるのに向いています。
The Science of Living(1929)
アドラーの思想全体を概観できる概説書です。人生の課題、ライフスタイル、共同体感覚といった中心概念が、実践的な文脈で説明されます。
英語圏では長くアドラー入門として読まれてきました。
What Life Should Mean to You(1931)
アドラーの主著の一つで、日本語では『人生の意味の心理学』として知られています。
人生の意味を「他者への貢献」に見出す考え方、共同体感覚(社会関心)、3つの人生の課題(仕事・交友・愛)が中心テーマです。一般向けで読みやすく、最初の一冊に向いています。
→ 詳しくは『人生の意味の心理学』とは
Social Interest: A Challenge to Mankind(1933)
原題は Der Sinn des Lebens。アドラー晩年の著作で、共同体感覚を人間の生き方の中心に据えて論じます。
原典の中では思想的に最も成熟した段階を示す一冊だと言えます。
初心者におすすめの読む順番
すべてを最初から読む必要はありません。次の順番が取り組みやすいと考えられます。
1. What Life Should Mean to You(1931)
まずは主著から。人生の意味、共同体感覚、3つの課題という全体像がつかめます。日本語訳も入手しやすい一冊です。
2. Understanding Human Nature(1927)
次に、人間の性格や発達についての理解を深めます。日常の具体例が多く、実感を持って読み進められます。
3. The Science of Living(1929)
理論の見取り図を確認します。ここまでで触れた概念が、一つの体系として整理されます。
4. The Practice and Theory of Individual Psychology(1920)
余力があれば、理論の原典にあたります。難度は上がりますが、個人心理学の骨格を直接確かめられます。
5. 初期・晩年の著作へ
The Neurotic Constitution(1912)や Social Interest: A Challenge to Mankind(1933)は、思想の出発点と到達点を知るための一冊です。入門の後に回すのが無理のない順番です。
日本語訳について
アドラーの著作の日本語訳は、出版社によって書名も訳語も異なります。
- 同じ原題でも、訳書のタイトルが複数存在することがある
- 「共同体感覚」「社会関心」など、訳語の揺れがある
- 抄訳・新訳・文庫版など、形態もさまざま
そのため、購入前に「どの原題の翻訳か」を確認しておくと安心です。
読むときの注意
時代背景を踏まえる
アドラーの著作は20世紀前半に書かれました。当時の社会や家族の前提が反映されている箇所があります。現在の知見と照らし合わせながら読むのが現実的です。
翻訳者のことばで読む
原典のニュアンスは、翻訳者の解釈を通して伝わります。気になる箇所は、別の訳や解説書と比べると理解が安定します。
→ 関連してアドラー心理学とはも参照してください。
