アドラー心理学の核心
アドラー心理学の核心は、たった一言で表せます。
「人間は、今この瞬間から変われる」
過去の出来事が現在の自分を決定づけている——多くの人はそう信じています。でもアドラーは言います。
「過去は、あなたが今使っている『材料』に過ぎない。家を建てるのに古い瓦を使うことも、新しい瓦を使うこともある。大切なのは、あなたがどんな家を建てたいかだ」
これがアドラー心理学の出発点です。
フロイトとの違い
アドラーはかつて、フロイトの弟子でした。しかし、考え方の違いから決別します。
| フロイト | アドラー | |
|---|---|---|
| 注目する点 | 過去の原因 | 未来の目的 |
| 人間の姿 | 過去の犠牲者 | 自らの人生の創造者 |
| 変化の可能性 | 限定的 | 常に可能 |
フロイトは「過去のトラウマが現在の症状を作る」と考えました(原因論)。
対してアドラーは「現在の目的が行動を決める」と考えました(目的論)。
例えば、「不安で外出できない」という症状。
- フロイト的見方:過去のトラウマが原因で不安が生じている
- アドラー的見方:外出したくないという目的のために、不安という感情を使っている
どちらが正しいかは別として、アドラーの考え方は「ならどうしたいのか?」という前向きな問いにつながります。
5つの基本的な考え方
アドラー心理学には、5つの基本的な考え方があります。
1. 自己決定論
人間は、自分の行動を自分で決められる
あなたは環境や過去のせいにできますか? アドラーは「いや、今この瞬間にあなたが選んでいるのだ」と言います。
2. 目的論
人間の行動には、必ず目的がある
怒るのも、不安になるのも、すべて目的があります。感情は「手段」であり、あなたが使っている「道具」です。
3. 全体論
人間は分割できない全体として捉える
心と体、理性と感情——これらは分かれていません。あなたは一人の人間として、全体として行動しています。
4. 認知論
人間は、自分なりの意味づけを通して世界を見ている
同じ出来事でも、人によって受け取り方が違います。大切なのは「何が起きたか」ではなく「あなたはどう意味づけたか」です。
5. 対人関係論
人間のあらゆる行動は、対人関係の中で生まれる
人間は一人で生きられません。すべての悩みは対人関係にあります。しかし、すべての喜びも対人関係から生まれます。
劣等感は成長の原動力
アドラーは「劣等感」を重要な概念として位置づけました。
誰しもが劣等感を持っています。「自分は足りない」と感じる気持ち。でも、それは悪いことではありません。
劣等感は、「もっと良くなりたい」という成長の原動力になります。大切なのは、劣等感に打ちのめされることではなく、劣等感をバネにすることです。
勇気づけとは
アドラーが最も重視したのが「勇気づけ」です。
勇気づけとは、ほめることでも、おだてることでもありません。困難を乗り越える力を与えることです。
「あなたにはそれができる」と信じ、「あなたは一人ではない」と伝える。それが勇気づけです。
課題の分離
アドラー心理学で最も実践的なのが「課題の分離」です。
「これは誰の課題か?」
- あなたがコントロールできること → あなたの課題
- 他人がコントロールすること → 他人の課題
他人の課題に介入しない。自分の課題に他人を介入させない。これが人間関係の悩みを減らす鍵です。
