瞑想(めいそう)は、ブッダが悟りに至る道として重んじ、八正道にも正定として組み込んだ実践です。心を静め、ものごとをあるがままに見る力を育てます。
二つの柱 ― 止と観
瞑想には、大きく二つの方向があります。
止(サマタ)
心を一点に集め、静める瞑想です。呼吸や一つの対象に注意を向け続け、散らかった心を落ち着けます。
たとえるなら、濁った水をそっと置いて、濁りが沈むのを待つ。心の水面が凪いでいく過程です。
観(ヴィパッサナー)
静まった心で、ものごとを観察する瞑想です。呼吸、身体の感覚、感情、思考の動きを、評価せずに見つめます。
「これは良い」「これは悪い」と判定する代わりに、「怒りが生じた」「ざわついている」とただ気づく。これによって、縁起や無常、無我を、頭ではなく経験として見るようになります。
止が心を静めるのに対し、観は気づきを鋭くします。両輪で使うのが基本です。
基本のやり方 ― 呼吸に気づく
いちばん取り組みやすいのが、呼吸に注意を向ける瞑想です。
- 静かな場所に座る。背すじを伸ばし、肩の力を抜く
- 目を閉じるか、うつむき加減に開く
- 呼吸に注意を向ける。鼻先やお腹の動きでよい
- 息が入る、止まる、出る。その感覚を追う
- 注意が逸れたら、責めずに、また呼吸へ戻す
逸れて戻す、その繰り返しが練習です。集中が切れるのは失敗ではありません。気づいて戻ることが、すでに実践になっています。
何が起きるか
最初のうちは、余計な考えが次々に浮かびます。うまくできないと感じるかもしれません。けれど続けると、少しずつ変わります。
- 息が浅くなり、体がゆるむ
- 考えと自分との間に、すき間ができる
- 怒りや不安が湧いても、飲み込まれにくくなる
- 日常の中で、ふと我に返る瞬間が増える
瞑想の効果は、座っている間より座った後の日常に現れます。数分の座りが、一日の受け取り方を変えていきます。
続けるコツ
- 短く、毎日を優先する。5分でも、週に一度の1時間より効く
- 完璧を目指さない。うまくいかない日があってよい
- 時間と場所を決める。朝の起床後、夜の就寝前など
- 「良い瞑想だった」と評価しない。評価は新たな執着になる
- 苦しくなったら、無理をしない。座るのをやめて歩くだけでもよい
中道と同じで、続けられる加減を見つけることが大切です。
日常でどう使うか
瞑想で身につくのは、特別な境地より気づきの習慣です。
電車で座っているとき、会議の前、食事前。一呼吸だけ、呼吸に注意を戻す。これが、八正道の正念へつながります。
腹が立ったときも同じです。反射的に言葉を出す前に、一回だけ呼吸を見る。その数秒のすき間が、後悔の多い返し方を防ぎます。
